ChatGPTが“アプリの操作”まで可能に!OpenAIが発表した新機能「Apps SDK」とは?

OpenAIが提供するChatGPTが、ついに“アプリを動かすAI”へと進化しました。
2025年10月に発表された新機能「Apps SDK」は、ChatGPTの中で外部アプリを直接操作できる仕組みを開放するものです。これまでChatGPTは「文章を生成するツール」としての位置づけが強かったですが、この発表によって“AIが中心となって作業をこなすプラットフォーム”への大きな一歩を踏み出しました。
たとえば、「スプレッドシートを開いて、昨日の売上データをグラフ化して」と話しかけるだけで、ChatGPTが実際にGoogle Sheetsを操作して作業を完了してくれる――。そんな“AIオペレーター”の時代が、現実のものになろうとしています。
ChatGPT「Apps SDK」とは

「Apps SDK」は、ChatGPT上で動作する“アプリケーション連携のための開発キット”です。
従来のChatGPTには「GPTs」と呼ばれるカスタムAIを作れる機能がありましたが、「Apps SDK」はその拡張版にあたります。これにより、開発者はChatGPTの内部で独自のアプリを構築し、ユーザーがそのままAIと自然な会話でアプリを操作できるようになります。たとえば、SlackやGoogle Drive、Notionなどの外部サービスをChatGPTから直接呼び出し、情報の検索・送信・整理などを自動で行うことが可能です。
これまで「ChatGPT → API経由でアプリ」という間接的な操作だったものが、「Apps SDK」の登場により“ChatGPTそのものが操作ハブ”になるのです。
主要機能と活用例

「Apps SDK」により、ChatGPTは単なる会話AIから“万能AIオペレーター”へと進化します。
例えば以下のような使い方が想定されています。
タスク管理アプリとの連携
ChatGPTに「今週の予定をまとめて」と話すと、TodoistやGoogle Calendarを自動操作してスケジュールを作成。
資料作成の自動化
CanvaやGoogle Docsと連携し、プレゼン資料の草案を作成。
ビジネスメールの送受信
Gmail API経由でメールを自動整理。返信文もChatGPTが提案。
社内データの統合検索
DriveやNotionなど複数のツールを横断して情報を取得。
従来はAPIを自作したり、Zapierなどの連携サービスを経由する必要がありましたが、「Apps SDK」を使えば、ChatGPT上で全て完結できます。ユーザーは複数のアプリを意識せず、自然言語で一貫した作業を進められるのです。
開発者向けの新機能「Apps SDK」

開発者にとって「Apps SDK」は革命的なツールです。SDK(Software Development Kit)は、ChatGPT内で動作する独自アプリを作るための開発環境で、JavaScriptやTypeScriptを使って実装できるよう設計されています。これにより、企業や個人開発者は自社サービスをChatGPT上に“アプリ”として提供可能になります。
OpenAIは、これを「ChatGPTを1つのエコシステムにする第一歩」と位置づけています。たとえば、企業が自社のFAQやカスタマーサポートAIをChatGPT内に統合することで、ユーザーは「公式アプリを探す」手間なくChatGPT上から直接アクセスできます。アプリストアのように、ユーザーはChatGPT内でさまざまなアプリを追加し、AIが状況に応じて最適なアプリを提案してくれる未来が描かれています。
ChatGPTが“プラットフォーム化”する未来
今回の発表で特に注目すべきは、ChatGPTが「単なるAIサービス」から「アプリの統合プラットフォーム」へと進化するという点です。「Apps SDK」の導入によって、ChatGPTはもはや“チャットボット”ではなく、“AIオペレーティングシステム(AI-OS)”に近い存在になります。
Microsoftが推進する「Copilot」、Googleの「Gemini for Workspace」、Anthropicの「Claude API」なども、同様にアプリ統合型の進化を見せていますが、OpenAIのアプローチは“よりユーザー中心的”です。ユーザーが意識しなくても、ChatGPTが裏で必要なアプリを呼び出し、作業を自動で完結してくれる。つまり、アプリのUIを操作する必要がなくなるのです。
この方向性は、スマートフォンの登場がもたらした「アプリ中心の時代」から、「AI中心の時代」への転換を意味しています。
今後の展開と日本市場への影響
現時点(2025年10月)では、「Apps SDK」は開発者向けに限定的な公開が始まった段階であり、日本ではまだ正式利用はできません。しかし、OpenAIは今後数カ月以内に段階的な開放を予定しており、将来的にはChatGPT PlusやTeamプランのユーザーにも利用が広がる見込みです。日本企業にとっても、この流れは大きなチャンスです。これまでAIを活用するには高い開発コストがかかりましたが、「Apps SDK」によって「ChatGPT内で自社サービスを動かす」というシンプルな導入が可能になります。
ノーコードツールや社内業務自動化との親和性も高く、特にバックオフィス業務やカスタマーサポート領域では導入効果が大きいでしょう。また、教育・行政・医療分野などでも、安全な環境でAIを業務に組み込む仕組みとして注目されています。「Apps SDK」を使えば、ChatGPTが「AI窓口」になり、専門システムとの橋渡しをしてくれるようになるのです。
最後に
OpenAIの「Apps SDK」は、ChatGPTの可能性を一段と広げる画期的な技術です。これまでAIは“人が指示して答えるツール”でしたが、これからは“AIが自らタスクを実行し、人をサポートする存在”になります。つまり、ChatGPTは「使うAI」から「働くAI」へ。ユーザーがアプリを使い分ける時代から、AIが最適なアプリを呼び出してくれる時代へと移行しつつあるのです。日本でも本格的に展開されれば、日常業務から創作、教育、行政まで、AIによる効率化の波はさらに加速するでしょう。「Apps SDK」は、ChatGPTが“次世代のOS”として社会に根付く未来の第一歩なのかもしれません。
筆者Y.S