イギリスで詐欺対策として導入された、おばあちゃんのように話すAI「デイジー」とは?
イギリスの通信事業者Virgin Media O2が、電話詐欺対策として画期的なAIシステム「デイジー」を導入すると発表しました。「デイジー」は詐欺対策として開発され、まるで「おばあちゃんのように話す」という特徴を持つAIです。詐欺師との会話を長引かせ、詐欺被害を防ぐことを目的としている、おばあちゃんAI「デイジー」について今回は解説いたします。
開発された背景にある詐欺の現状と高齢者への影響
(出典:Virgin Media O2社)
オレオレ詐欺などの特殊詐欺は、特に高齢者を狙ったものが多く報告されています。詐欺師たちは、高齢者の善意や社会的孤立を悪用して、電話やオンラインで金銭や個人情報を搾取する手口を多用しています。こうした詐欺被害は家族や地域にも大きな影響を及ぼし、社会問題として認識されています。日本においても特殊詐欺の被害はいまだに増加傾向にありますが、世界中でも同じような詐欺事件は発生しています。イギリスでも同様の問題が深刻化しており、5人に1人が詐欺に遭遇したことがあるというデータもあります。特に電話を使った詐欺では、詐欺師が親しげに話しかけてきたり焦らせたりすることで、高齢者が冷静に判断するのを難しくしています。そこで登場したのが、AI「デイジー」です。「デイジー」は、「話の流れをゆっくり進める」「聞き返す」など、詐欺師に対して一筋縄ではいかない「おばあちゃん」のような特徴で対抗する役割を持っています。
AI デイジーの特徴
(出典:Virgin Media O2社)
「デイジー」は「話がゆっくりで、ちょっとしたおばあちゃんらしい勘違い」をわざと演じるように設計されています。焦らずゆっくりと話し、時には会話の内容を確認するように聞き返すことで、詐欺師のペースを崩します。「デイジー」は年配の方特有の「やり取りのリズム」や「反応パターン」を巧みに再現できるようになっています。そのため、会話をすぐに進めず、やり取りを確認したり、かと思えば、編み物や飼っている猫の話など、とりとめのない話をして詐欺師の時間を奪います。
こうした会話スタイルで詐欺師とやり取りをすることで、詐欺師の意図をそらし、電話を長引かせることで、最終的に詐欺師の時間を多く浪費させたり、諦めるように仕向けるのがデイジーの役割です。
デイジーを導入するメリット
(出典:Virgin Media O2社)
「デイジー」を導入するメリットとしては、「デイジー」との会話で詐欺師を混乱させ時間を浪費することで、詐欺師の気力を奪ったり、被害件数を減らすことが期待されます。また、人が対応するのではなく、AIが対応することで同時に複数の人間と会話することができ、人件費コストを抑えることも可能です。他にも、詐欺師の手口に関する情報を得て分析することで、今後の対策に役立つなどのメリットがあります。
▼英語ですが、YouTubeで「デイジー」のデモ映像も公開されています。
最後に
「デイジー」は、AIを活用したユニークな詐欺対策システムです。おばあちゃんというキャラクターを通じて、詐欺師との会話を長引かせ、被害を未然に防ぐというアイデアは、非常に革新的ですね。この取り組みが成功すれば、世界中の詐欺被害減少に貢献できるかもしれません。AI技術の進化は日進月歩です。将来的には、「デイジー」のようなAIが、より高度な会話能力や、様々な言語に対応できるようになるでしょう。また、他の種類の詐欺にも対応できるよう、AIの学習データも充実していくことが期待されます。「デイジー」の登場は、AIが私たちの生活をより安全にする可能性を示唆しています。今後も、AI技術がどのように社会問題の解決に貢献していくのか、注目していきましょう。
筆者Y.S