自宅から簡単に利用できる!大日本印刷が提供する「メタバース役所」とは
メタバースと呼ばれる仮想空間がさまざまな分野で注目され、ゲームの世界だけでなく、私たちの生活にも浸透しつつあります。行政サービスもその例外ではありません。印刷大手の大日本印刷株式会社(DNP)が、地域の住民が自宅にいながらもリアルな行政手続きを行える「メタバース役所」という新しいサービスを提供しています。この「メタバース役所」は、行政手続きのデジタル化と利便性の向上を目的とし、幅広い利用者層から注目を集めています。今回は、「メタバース役所」の概要などについて解説いたします。
↓メタバースについての解説はこちらの記事をご覧ください
メタバース役所とは
(出典:大日本印刷株式会社WEBサイト)
「メタバース役所」は、DNPが開発した、インターネット上の仮想空間で利用者が手続きや相談といった行政サービスを受けられるシステムです。これにより、従来の対面での役所訪問や紙の申請書類を必要とせず、スマートフォンやパソコンからアクセスするだけで各種の手続きを行うことが可能です。DNPが開発したこのサービスは、メタバースという新しいデジタル技術を活用して地域住民の利便性を大幅に向上させることを目指しています。
▼動画でも紹介されています(DNPの公式YouTubeチャンネルより)
メタバース役所の特徴
自宅からアクセス可能
物理的な役所への訪問が不要となり、自宅にいながら必要な行政手続きを行えます。これにより、特に高齢者や子育て世帯、忙しいビジネスパーソンなどの利用者がより手軽に行政サービスにアクセスできるようになっています。
仮想アバターでの対応
メタバース内では、ユーザーが自分のアバターを操作し、窓口担当者と会話しながら手続きを進めます。これにより、実際の役所窓口での対話に近い感覚で手続きを行うことができます。
地域情報の発信とコミュニティの場としての役割
メタバース役所では、自治体からのお知らせや地域のイベント情報の提供も行われています。また、利用者同士が交流できるスペースが設けられていることもあり、コミュニティの場としての役割も果たしています。
東京都江戸川区が取り組んでいる「メタバース区役所」プロジェクト
(出典:東京都江戸川区WEBサイト)
東京都江戸川区は東京情報デザイン専門職大学(TID)と連携して「メタバース区役所」プロジェクトに取り組んでいます。これは「メタバース区役所」プロジェクトを通じて、インターネット上の仮想空間で区役所のサービスを提供し、住民が自宅から役所の手続きを行えるようにする取り組みです。江戸川区はこのシステムの先行運用を2024年6月26日に開始し、物理的に役所に訪れることなく手続きが行える「来庁不要の区役所」の実現を目指しています。この「メタバース区役所」プロジェクトは、DNPが進める「XRコミュニケーション®」事業の一環でもあり、リアルとバーチャルが融合した新しい行政サービスの形を提案しています。
自治体に活用されているメタバース例
「メタバース役所」に限らず、メタバースは様々な自治体で観光客の誘致や地域の活性化のために活用されています。ここでは自治体のメタバース活用例をご紹介します。
大阪府:バーチャル大阪
(出典:大阪府WEBサイト)
「バーチャル大阪」は、2025年の大阪・関西万博に向け、大阪府が展開する都市連動型メタバースプロジェクトです。この仮想空間では、大阪の観光地や文化を国内外に発信し、ユーザーは大阪城や道頓堀などの名所を体験できるほか、バーチャルイベントや商店街でのショッピングも楽しめます。「バーチャル大阪」のプラットフォームには「cluster(クラスター)」が使用されており、大阪への観光誘致や地域経済の活性化、新たな文化やコミュニティの創出が期待されています。
兵庫県養父市:バーチャルやぶ in ZEP
(出典:兵庫県養父市WEBサイト)
「バーチャルやぶ in ZEP」は、兵庫県養父市がメタバースを活用し、観光PRを行うプロジェクトです。仮想空間に観光スポットや公共施設を再現し、市民や観光客がどこからでもアクセス可能なインタラクティブな場を提供しています。訪問者は累計約1万5000人に上り(令和5年8月末時点)、観光客の誘致や市民同士の交流など地域経済活性化への貢献が期待されており、養父市のこの取り組みは、地方創生の良い事例とされています。
さいたま市:バーチャル埼玉
(出典:さいたま市WEBサイト)
「バーチャル埼玉」は、さいたま市がメタバースを通じて埼玉県の魅力を世界に発信するプロジェクトです。埼玉の代表的な観光地である「さいたまスーパーアリーナ」や「川越の蔵造りの町並み」が3Dでリアルに再現されており、訪問者はバーチャル空間でこれらの観光地を体験できます。可愛らしいアバターを操作することで埼玉の名所を探索することができるほか、イベントへ参加することができます。このプロジェクトの目的は、埼玉の観光資源を広めて観光客を増やし、地域経済を活性化することにあります。メタバースプラットフォームには株式会社Urthの「V-air」を採用しており、バーチャル空間を通じて埼玉の魅力を国内外に効果的にPRしています。
メタバースを導入するリスク
メタバースは魅力的な体験を提供できる一方で、さまざまなリスクも存在するため、導入する際には慎重な検討が求められます。ここではそのリスクについて説明します。
メタバースの依存性
メタバースの強い没入感により、特に若年層は長時間利用して現実の生活に支障をきたす可能性があります。導入する際には適切な利用指針を設け、過度な依存を防ぐ必要があります。
デジタル格差の拡大
VR機器やインターネット環境が必要なため、高齢者や技術に不慣れな人々は利用が難しく、デジタル格差が広がる恐れがあります。そのため誰もが利用しやすい環境とサポートを提供することが重要になってきます。
セキュリティ問題
メタバースにはユーザーの個人情報が集積されるため、サイバー攻撃や情報漏洩のリスクがあります。個人情報を保護するための高度なセキュリティ対策が不可欠です。
匿名性によるリスク
匿名性により自由な交流が可能である一方、嫌がらせや詐欺のリスクも伴います。特に未成年者の利用には厳格なルールと監視体制が求められます。
最後に
「メタバース役所」は、行政サービスのデジタル化を加速させる一つの手段です。このサービスを通じて、より多くの人が行政サービスにアクセスしやすくなり、行政と住民との関係がより円滑になることが期待されます。今はまだ全国への普及はされていませんが、実証実験が進むことで導入する自治体も増えてくると考えられます。高齢者や子育て中の人など、市役所や区役所に出向くのが難しい人にとって場所を選ばすに利用できる「メタバース役所」はとてもありがたいサービスですね。
筆者Y.S