NEC、LLMと画像分析で被災状況をリアルタイムに可視化する技術を茨城県つくば市で実証実験
近年、自然災害の頻度や規模が大きくなり、その対策が急務となっています。特に、迅速な情報収集と共有は、被害の拡大を防ぎ、円滑な復旧へと繋がる重要な要素です。そんな中、NECが、災害時の被災状況をリアルタイムに可視化することを目指して、大規模言語モデル(LLM)と画像分析技術を活用した画期的な実証実験を2024年11月より茨城県つくば市で実施すると発表しました。今回はLLM技術を使った実証実験がどのようなものか解説いたします。
先端技術を用いた被災状況の把握
NECは、2024年度内閣府が推進する「先端的サービスの開発・構築及び規制・制度改革に関する調査事業(スーパーシティ・デジタル田園健康特区対象)」に採択され、茨城県つくば市にて、災害時に住民の投稿画像を活用した被災状況の可視化を目指す実証実験を開始します。この取り組みでは、大規模言語モデル(LLM)と高度な画像分析技術を使用して、災害時の迅速な状況把握を支援します。
今回のNECの実証実験は、住民がアプリに投稿した画像を基に被災状況をリアルタイムで分析・可視化する技術を開発し、実際の災害時における初動対策や支援活動の向上を目指しています。住民の視点から投稿された情報をもとにすることで、自治体は現地の正確な状況を素早く把握できるだけでなく、被害状況に応じた適切な対応を取ることが可能になります。
この技術は、通常の画像解析だけではなく、LLMを活用したテキスト解析を組み合わせることで、画像による絞り込みだけでなく「倒壊した建物を探す」といったテキストによる絞り込みも可能になり、即座に状況を把握できるので精密な災害対策を可能にします。
茨城県つくば市での実証実験
LLMと画像分析技術を活用したこの技術は、スーパーシティ型国家戦略特区に指定されたつくば市で2024年11月から2025年1月にかけて、実証実験が行われる予定です。このプロジェクトの一環として、つくば市の公式アプリ「つくスマ」との連携を想定した開発が行われています。「つくスマ」を使用して住民が投稿した画像が、平時や災害時の状況把握に活用される予定であり、特に違法駐車や混雑場所の可視化など、災害時に潜在的な問題となりうる状況も検証されます。
デジタル技術による防災への貢献
NECの取り組みは、防災分野におけるデジタル技術の活用可能性を大きく広げます。災害時にSNSやアプリで住民が共有するリアルタイムの画像や情報は、既存の防災体制では収集が難しい部分を補完します。これにより、自治体が迅速かつ正確な対応を取れるようになり、より安全なコミュニティの形成に貢献することが期待されています。
さらに、NECは今回の実証を契機に、地域の状況をリアルタイムで可視化させることで、今後はデジタルツインの導入を進めていく計画です。デジタルツインは現実の世界をデジタル上に再現する技術で、災害対策をはじめ都市のさまざまなサービスの高度化に寄与すると考えられています。
今回の実証実験では、災害時に収集される画像に含まれる個人情報の取り扱いも重要な課題とされています。例えば、住民が投稿した情報に個人が映り込んでいる写真や情報が含まれている場合、その個人情報がどのように利用されるかについてのルール作りが必要です。NECは、この分野における制度改革を促進するため、個人情報の利用目的外での取り扱いについても技術検証を進めています。
最後に
NECの実証実験は、AI技術が災害対応にどのように貢献できるかを示す非常に興味深い取り組みです。今回行われる実証実験は、災害時の情報収集・共有のあり方を大きく変える可能性を秘めており、将来的にはこの技術が全国に広がり、より多くの地域で活用されることが期待されます。住民の力とAIの力を組み合わせることで、より安全で安心な社会の実現に繋がることが多いに期待されますね。
筆者Y.S