AIがデバイスの壁を越える! LenovoとMotorolaが発表した新しいAI基盤「Qira」と未来のAI端末とは
2026年1月、ラスベガスで世界最大級のテクノロジー見本市「CES 2026」が開催されました。数多くの革新的なデバイスが発表される中、世界最大のPCメーカーであるLenovo(レノボ)と、その傘下で躍進を続けるMotorola(モトローラ)が共同で発表した、次世代AI基盤「Qira(キラ)」が注目を集めています。「Qira」の発表は、未来のコンピューティングの姿を決定づけ、これまでのAIとは一段違う“未来の使い方”を感じさせるものでした。私たちが手にするデバイスが、単なる「道具」から、私たちの意図を先回りして理解する「環境」へと進化しようとしています。今回は、この革新的なAIエージェント「Qira」と、同時に披露された驚きのウェアラブル端末「Project Maxwell」について解説します。
AIが「道具」から「相棒」へ変わる時代

これまでのAIは、「聞いたら答えてくれる」「命令したら動く」という、どちらかといえば“便利な道具”としての存在でした。しかし、LenovoとMotorolaが目指しているのは、もっと身近で、もっと自然に人を支えてくれるAIです。
その中心にあるのが、新しく発表された共通AI基盤「Qira」です。「Qira」は、スマートフォンやパソコン、タブレット、さらには身につけるデバイスまでを横断して動作するAIの土台となる仕組みです。つまり、特定のアプリや1台の端末に閉じたAIではなく、生活全体を見渡してサポートしてくれる存在を目指しています。
デバイスの垣根を溶かすQira、その機能と技術

「Qira」は、Lenovoが提唱する「Personal Ambient Intelligence(個人用環境知能)」を具現化したシステムです。特定のアプリを立ち上げて指示を待つ「チャットボット型」のAIではなく、ユーザーの周囲(アンビエント)に常に存在し、文脈を読み取ってサポートする「エージェント型」へのシフトを象徴しています。
その最大の特徴は、PC(Lenovo製品)とスマートフォン(Motorola製品)でAIが「記憶」と「文脈」を共有する点にあります。 例えば、あなたが外出中にMotorolaのスマホで取引先とチャットしていたとします。帰宅してLenovoのノートPCを開いたとき、「Qira」はすでにその会話の内容を「知って」います。「さっきのチャットの続き、資料にまとめておいたよ」と提案してくれるような、デバイスの壁を感じさせないシームレスな体験が実現するのです。
Qiraの主要機能
Catch Me Up(キャッチ・ミー・アップ)
デバイスから離れていた時間に何が起きたかを瞬時に要約します。未読メール、チャット、カレンダーの変更などを統合し、ユーザーが次に何をすべきかを提示します。
Next Move(ネクスト・ムーブ)
現在の作業状況を分析し、論理的な次のステップを提案します。レポートを書き終えた瞬間に「関連するグラフをスライドに挿入しますか?」と問いかけてくるような、プロアクティブな支援です。
Smart Share(スマート・シェア)
PCとスマホ間でのメディア転送を、AIが最適なタイミングと方法で自動実行します。ケーブルもクラウド経由の手動操作も不要になります。
ハイブリッドAIアーキテクチャ
「Qira」の中核を成しているのが、オンデバイス処理とクラウド処理を組み合わせたハイブリッドAI構成です。即時性やプライバシーが重要な処理は端末内で実行し、大規模推論や横断的な情報処理はクラウド側で補完します。この構成により、レスポンス性能と高度な情報活用の両立を実現しています。特に、個人データの扱いに対する配慮は、今後のAI基盤において不可欠な要素です。「Qira」は、AIが常時ユーザーに寄り添う存在になることを想定しているからこそ、すべてをクラウドに依存しない設計を重視しています。
ペンダント型AI端末「Project Maxwell」 – 常時装着型AIという新しいインターフェース

「Qira」と同時に披露された「Project Maxwell」は、首から下げるペンダント型のAIウェアラブル端末です。完成製品ではなくコンセプトモデルですが、AIとのインタラクションを再定義する試みとして注目されています。
「Project Maxwell」は「マルチモーダル知覚フュージョン」を採用しており、カメラ・マイク・各種センサーを搭載し、ユーザーの周囲環境や状況をリアルタイムで把握できる設計となっています。ユーザーが首から下げることで、「Qira」は「ユーザーが見ているものを見て、聞いているものを聞く」ことが可能になります。スマートフォンのように端末を取り出して操作する必要がなく、常にAIが状況を理解している状態を前提としている点が特徴です。
今後の課題と展望

「Qira」が本格的に展開されるには、いくつかの課題があります。対応デバイスの拡充、AIの説明可能性と信頼性、ユーザーが制御できるプライバシー設計、そして開発者エコシステムの構築が重要になります。特に、AIが「自動的に判断すること」への違和感をどう抑えるかは、UX設計上の大きなテーマです。一方で、「Qira」が示したクロスデバイスAI基盤という方向性は、今後のAI競争において重要な軸になる可能性があります。
最後に
LenovoとMotorolaが発表した「Qira」は、AIを単なる機能からパーソナルプラットフォームへと進化させる試みです。また、ペンダント型AI端末「Project Maxwell」は、AIとの接点をディスプレイ中心の操作から解放し、常時装着型へと広げる可能性を示しました。AIが私たちの隣に寄り添い、世界を共に理解し、必要な時にだけそっと手を差し伸べてくれる。LenovoとMotorolaがCES 2026で示したのは、そんな「AIが空気のように溶け込んだ未来」なのかもしれません。
今後、この基盤がどこまで実装され、どのような体験として形になるのか、IT・デバイス業界にとって注目すべき動きだと言えます。
筆者Y.S
