シャープが挑む“触れるVR”の世界!実証実験中のVR触覚コントローラーとは?

これまでVR(仮想現実)といえば、視覚や聴覚に訴える体験が中心でした。しかし近年、「触覚」による没入感の向上が注目されており、ついに大手家電メーカーであるシャープが、VRで“触れる”体験を可能にする「VR触覚コントローラー」の実証実験を開始しました。
「物体に触れたときの感触をリアルに再現できたら?」そんな夢のような技術が、現実味を帯び始めています。今回は、シャープが開発した「VR触覚コントローラー」の概要や特徴、そして今後の可能性について解説していきます。
シャープが開発した「VR触覚コントローラー」とは?

(出典:シャープ株式会社「VR触覚コントローラー」特設サイトより)
シャープが取り組んでいる「VR触覚コントローラー」は、仮想空間内の物体に“触れた”と感じられる技術を搭載した新型コントローラーです。従来のVRコントローラーは、手の動きを追従することで仮想空間での操作を可能にしていましたが、「触れる」感覚までは再現できませんでした。
今回の実証実験では、実際に触れているかのような触覚フィードバックを得ることで、よりリアルで直感的なVR体験を目指しています。シャープのコントローラーは、手に装着するハードウェアと、独自の触覚再現技術を組み合わせたものです。
開発の背景には、VR体験のさらなる没入感向上、そしてゲームやエンターテイメント分野だけでなく、医療、教育、産業といった幅広い分野への応用を視野に入れた、VRの社会的価値を高めたいというシャープのビジョンがあります。触覚が加わることで、VRは単なる「見る・聞く」だけの体験から、「見て・聞いて・触れる」という、より豊かな五感に訴えかける体験へと進化を遂げるのです。
他社との比較とシャープの強み
VR触覚技術は、MetaやSonyなど他社も研究を進めていますが、シャープのコントローラーは「小型・軽量・高精度」という点で優れているといえます。また、国内メーカーならではの緻密な技術設計とユーザー目線のUI設計も魅力のひとつです。さらに、シャープはディスプレイ技術やセンサーデバイスの開発も得意としており、それらの技術を組み合わせることで、より高品質なVRソリューションを提供する可能性があります。
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「VR触覚コントローラー」の特徴と技術的なポイント

(出典:シャープ株式会社「VR触覚コントローラー」特設サイトより)
多彩な振動で“触感”を再現!「VR触覚コントローラー」の仕組み
シャープの「VR触覚コントローラー」は、指先に装着する多分割駆動の触覚素子を搭載。電極を細かく分割することで、面内に多彩な振動パターンを生成し、指の皮膚表面にリアルな“手触り”を再現します。現在は、力加減や温度の再現は非対応となっています。
触覚データの自由な編集・実装も可能に
触覚データの作成は、今後開発予定の専用ソフトだけでなく、一般的な画像編集ソフトを活用できるよう設計が進められています。ノーコードで直感的に操作できるGUIによる編集も視野に入れており、専門知識がなくてもオリジナルの触感を作成できるようになるかもしれません。さらに、作成した触覚データは、一般的なゲームエンジンを使用してVR空間に組み込むことも想定されています。
標準操作もカバーする万能コントローラー

(出典:シャープ株式会社「VR触覚コントローラー」特設サイトより)
「VR触覚コントローラー」にはスティックやボタンが搭載されており、移動やジャンプなどの標準的な操作にも対応しています。さらに、着脱が容易な設計となっているため、使用状況に応じてスムーズに装着・取り外しが可能です。必要に応じて、キーボード操作への切り替えもできるため、VR体験から通常のPC操作への移行もスムーズに行えます。触覚表現と標準操作を両立した、柔軟性の高いコントローラーとして設計されています。
応用分野と期待される用途

この「VR触覚コントローラー」が本格的に実用化されれば、さまざまな分野での活用が期待されます。
教育やエンタメ分野
美術や工芸、プログラミング教育などで、触覚を活用した体験型学習が実現できます。VRゲームでも、リアルな操作感を加えることで、より臨場感のあるプレイが可能になります。
医療トレーニング
医学生や外科医の訓練では、仮想手術内でリアルな触感を再現することで、実際の施術に近い体験が可能となります。
製造業やメンテナンス業務
複雑な機器の組み立てや保守作業を仮想空間で練習する際に、工具の重さや素材の硬さを触覚として再現できることで、より高い習熟効果が期待されます。
最後に
シャープが実証実験を開始した「VR触覚コントローラー」は、これまでVR体験の最後の壁として立ちはだかってきた「触覚」の再現に、一つの大きな答えを提示する画期的な技術です。その高精細なハプティクス技術は、VRの世界を単なる視覚と聴覚の空間から、見て、聞いて、触れて、感じることができる、よりリアルで豊かな体験へと進化させる可能性を秘めています。ゲームやエンターテイメント分野はもちろんのこと、医療、教育、産業といった社会の様々な分野に革新をもたらすこの技術の今後の進展は、私たちのVRに対する認識を根本から変えるかもしれません。シャープの実証実験がどのような成果をもたらし、VRの未来をどのように切り開いていくのか、今後の動向に大いに注目していきましょう。
筆者Y.S