阪神・淡路大震災から30年、神戸市はデジタルで防災をアップデート
1995年に発生した阪神・淡路大震災から間もなく30年が経過します。30年という節目を迎え神戸市では、過去の経験と教訓を未来に活かすため、多角的な取り組みを進めています。その中でも注目されているのが、防災分野におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)を進める取り組み「デジタル防災」です。「デジタル防災」はAIやICT技術を活用し、災害への備えを強化する取り組みです。今回は、2025年に震災から30年という節目を迎える神戸市が取り組む「デジタル防災」について解説いたします。
神戸市が取り組む「阪神・淡路大震災30年事業の推進」
(出典:兵庫県WEBサイトより)
2025年1月17日、阪神・淡路大震災から30年を迎える神戸市では、この節目を機に「忘れない」「伝える」「活かす」「備える」に加え、新たに「繋ぐ」を追加した基本コンセプトをもとに、教訓を次世代へ引き継ぎ、災害への備えを強化するだけでなく、未来志向の取り組みとして持続可能な社会を目指しています。この基本コンセプトのもと、「ひょうご安全の日のつどい」や「30年記念事業」といったイベントが行われ、市民や関係機関が一体となって、震災の記憶を共有する機会を提供しています。
「デジタル技術×防災」のシンポジウムが12月に開催
神戸市では、12月13日(金)に「デジタル技術×防災」をテーマにした実践型シンポジウムが開催されます。このイベントでは、最新技術を活用した防災対策の現状や、今後の展望について、専門家による講演やパネルディスカッションが行われ、最新のデジタル防災技術を体験しながら学ぶことができます。
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神戸市が進めるデジタル防災の概要
危機管理システムの導入
神戸市は、令和元年度に「危機管理システム」を導入しました。このシステムにより災害対策本部のデジタル化を図り、災害時の情報共有や判断を迅速化しています。このシステムの特徴として、気象情報や被害情報、避難情報といった災害情報をシステム内に集約することで、各局間で迅速に共有が可能になるといった「情報共有機能」や、ハザードマップや被害情報、気象情報を地図上に表示することで、現状を正確に把握し、災害対応方針や避難情報発表などの判断材料とする「判断支援機能」のほか、避難情報を速報やYahoo!防災アプリなどに一斉配信し、市民への迅速な情報提供を実現する「一括情報発信機能」があります。
AIやICT技術を使った災害対応
神戸市ではAIやICT技術を使った災害対策も行われています。その一つとして、TwitterなどのSNS上で投稿された災害関連情報をAIが自動で収集・識別し、必要な情報を迅速に通知するシステム「スペクティー」を活用した災害情報の収集があります。他にも、LINE上の防災チャットボットを活用した災害情報共有システムの実証実験が、防災科学技術研究所やLINE、ウェザーニュースなどが参加する「AI防災協議会」と連携して行われており、約1万人の登録者を対象に、大雨警報や台風接近情報の投稿を呼びかけ、市民からの情報収集を迅速化しています。
マニュアルをプラットフォーム化した災害対応工程管理システム
神戸市では、災害対応に関する各種計画やマニュアルをプラットフォーム化し業務の効率化を図る「災害対応工程管理システム」を導入しています。このシステムは、災害時に必要な計画やマニュアルを統合し、災害の種類に関係なく迅速に活用できるシステムです。従来、地震や風水害などの災害に個別に作成されていた計画やマニュアルは、実際の災害発生時に必要な資料を迅速に検索することが困難でした、このシステムにより、情報の一元化と効率的な活用が可能となりました。
神戸市のDXを活用した防災・減災事例
フルリモートでの復旧・復興支援
石川県珠洲市で発生した地震の際、神戸市は、道路状況収集・共有アプリをわずか2週間で構築し、ノウハウをフルリモートで提供することで迅速な復旧作業をサポートしました。
スパコン「富岳」を活用したシミュレーション
スーパーコンピューター「富岳」を活用し、避難誘導計画のシミュレーションを実施。結果として、群衆事故の発生可能性を40%削減する効果が確認されました。
LINEとウェザーニュースによる情報共有
LINEを通して市民が投稿した災害情報をAIが解析し地図上に集約、さらにWEB上で共有することで、市民発信型の迅速な情報共有を実現しました。
最後に
2025年には阪神・淡路大震災から30年。神戸市はデジタル技術を活用し、より安全な街づくりを目指しています。この取り組みは、単に神戸市だけの問題ではなく、日本全国、そして世界中の都市が直面している課題です。いつどこで地震が起きるかわからない現代社会において、「デジタル防災」は、私たちを守るための重要なツールです。AIによる迅速な情報収集や、市民参加型の防災システムなど、デジタル技術の可能性は無限大です。ただ、災害に対する対策はデジタル技術だけでなく、私たち一人ひとりが日頃から防災意識を持ち、備えをしておくことも大切です。この機会に、防災について見直してみてはいかがでしょうか。
筆者Y.S