【軍艦島のデジタル化】メタバースプロダクションがバーチャル背景素材を提供開始
軍艦島(正式名称:端島)は2015年に世界遺産に登録されたほどの歴史的な遺産です。その軍艦島がメタバースプロダクションによってデジタル化され、バーチャルプロダクション向けの背景素材として提供が開始されました。今回は、技術の進化がもたらした新しい形の遺産の保全活動のご紹介です。
軍艦島の歴史
軍艦島は日本の長崎県長崎市に位置しています。その名前の由来は、島全体が軍艦のような形状をしていることから来ています。明治から昭和にかけて、石炭の採掘が行われ、最盛期には5000人以上が島に住んでいた炭鉱の島で、島全体がコンクリートで覆われ、高層住宅や学校、病院などが建設され、非常に高度に都市化されていました。石炭産業の衰退により、1974年に炭鉱が閉山され、その後無人島となりました。その独特な歴史と景観から、映画やドキュメンタリーの撮影地としても人気がありました。現在も観光ツアーが実施されており、島の一部を見学することができます。ただし、老朽化が進んでいるため、立ち入ることができる場所は厳しく制限されています。2015年に「明治日本の産業革命遺産」の一部として、ユネスコの世界遺産に登録されました。この登録により、軍艦島は世界中から注目されるようになりました。
メタバースプロダクションとは?
メタバースプロダクションは東北新社、電通クリエーティブX、ヒビノ、電通クリエーティブキューブ、オムニバス・ジャパンによる共同プロジェクトです。メタバースプロダクションは、現実世界と仮想世界を融合させたよりインタラクティブで没入感のある映像制作を行っており、映像制作における「温室効果ガス削減」と「プロセス効率化」を目指しています。CGや実写の映像を大型のLEDディスプレイに映し出して撮影し、合成することで制作にかかる工程の削減や、コストの削減、環境への負担軽減を目指しており、エンターテインメント、教育、観光、ビジネスなど、多岐にわたる分野での活用が期待されています。
軍艦島のデジタル化
メタバースプロダクションは、最先端のデジタル技術を駆使して、歴史的建造物や風景を3D化して記録、保存を行うプロジェクトであるHERITAGE DATABANK(ヘリテージ・データバンク)と連携し軍艦島のデジタル化を行いました。このプロジェクトの目的は、歴史的遺産をデジタル保存し、バーチャルプロダクションに活用することで、多くの人々にその魅力を伝えることです。長崎市協力のもと、軍艦島全島を3Dスキャンし、高精度なデジタルアーカイブを構築しました。このデジタルアーカイブをもとに、バーチャル空間で使用できる背景素材を制作し、映画、テレビドラマ、ゲーム、バーチャルリアリティ(VR)コンテンツなど、様々な分野での活用を目指しています。素材使用料の一部は、長崎市へ軍艦島の保全予算として還元されます。
バーチャルプロダクション向け背景素材「軍艦島」の紹介映像
<参考サイト>
メタバースプロダクション WEBサイトhttps://metaverse-px.com/
軍艦島コンシェルジュ(公式WEBサイト)https://www.gunkanjima-concierge.com/
最後に
軍艦島は世界遺産に登録されたことで注目され、今や人気の観光地ですが、老朽化も進み保全が難しくなってきています。現在はツアーで一部の区間のみ上陸することができますが、いつかは上陸すらできなくなってしまうかもしれません。そう思うと、デジタル化して残すことで後世へ歴史を伝えることができるのは素晴らしいことですね。歴史的遺産をデジタル化することでその魅力を多くの人に伝えることができ、さらに、教育分野や、保全活動への推進など、バーチャルな世界が進化することで様々な可能性が広がっています。
筆者Y.S