STEAM教育とは? 〜AIによって変化する将来の職業〜
私たちの生活を便利にしてくれているAI技術ですが、その進化に伴って今まで人が行っていた作業がAIによって自動化されることで、雇用環境にも影響が出るのではと懸念されています。そんな中、注目を集めているのが「STEAM教育」です。今回は、AI発展時代に活躍できる人材を育てる教育として世界でも取り入れられている「STEAM教育」とAIの進化に伴う雇用問題について解説いたします。
AIによる職業危機
2015年に野村総合研究所と英オックスフォード大学との共同研究により発表されたデータによると、「10〜20年後に日本の労働人口の約49%が技術的にAI等で代替が可能となる」との結果が出ています。この研究結果によると「芸術、歴史学・考古学、哲学・神学など抽象的な概念を整理・創出するための知識が要求される職業、他者との協調や、他者の理解、説得、ネゴシエーション、サービス志向性が求められる職業は、人工知能等での代替は難しい傾向がある」としつつ、「特別の知識・スキルが求められない職業に加え、データの分析や秩序的・体系的操作が求められる職業については、人工知能等で代替できる可能性が高い傾向」としています。
また、同研究において、AIなどにより代替可能性の高い職業 100種、代替可能性の低い職業 100種の一覧も公開されています。
AIなどに代替される可能性が高い職業(一部抜粋)
一般事務員
医療事務員
受付係
データ入力係
電車運転士
レジ係
スーパー店員
CADオペレーター
銀行窓口係
倉庫作業員
ビル清掃員
ホテル客室係 など
AIなどに代替される可能性が低い職業(一部抜粋)
インストラクター(スポーツなど)
医師(産婦人科医、精神科医、小児科医、歯科医師など)
獣医師
アーティスト
デザイナー
クリエイター
映画監督
タレント・俳優
保育士・幼稚園教員
美容師
言語聴覚士・理学療法士
カウンセラー
コーディネーター
経営コンサルタント など
出典:野村総合研究所WEBサイトより
AIなどによる代替が難しい職業の特徴として医師、カウンセラー、保育士など人と関わる職業が多く挙げられます。人それぞれに合わせた臨機応変な対応が必要であり、マニュアル通りではなく状況に合わせた判断が必要となります。さらに他者を理解し、協調性や高度なコミュニケーション能力が必要になってくるため、こういった職業はAIには難しいとされています。他には、デザイナーやアーティスト、クリエイターなど創造的思考が必要となってくる職業もAIに代替されにくい職業です。
海外でも問題視されるAI導入による雇用問題
生成AIが飛躍的に進化している中国では、実際に生成AIに仕事を奪われれたイラストレーターが増えていることがニュースとなりました。アメリカでもAIの導入などにによって大幅に従業員を解雇するといった事例が問題となっています。
STEAM教育とは?
「STEAM(スティーム)教育」とは、Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Arts(芸術)、Mathematics(数学)の頭文字を取った言葉で、これらの分野を総合的に学ぶ教育法です。
「Arts(アート)」には美術や、デザイン、演劇などの芸術的な分野だけでなく、政治、経済、法律などの文化的な「教養(リベラルアーツ)」も含まれています。
「STEAM教育」は、知識を詰め込むだけの教育ではなく、各分野の知識を横断的に活用することで、問題解決能力や論理的思考力、創造性などを養うことを目的としています。
文部科学省も推進するSTEAM教育
文部科学省においても「STEAM教育」が重要視されており、WEBサイトにも以下のように記載されています。
STEAM教育等の各教科等横断的な学習の推進について
引用:文部科学省WEBサイト
AIやIoTなどの急速な技術の進展により社会が激しく変化し、多様な課題が生じている今日、文系・理系といった枠にとらわれず、各教科等の学びを基盤としつつ、様々な情報を活用しながらそれを統合し、課題の発見・解決や社会的な価値の創造に結び付けていく資質・能力の育成が求められています。
文部科学省では、STEM(Science, Technology, Engineering, Mathematics)に加え、芸術、文化、生活、経済、法律、政治、倫理等を含めた広い範囲でAを定義し、各教科等での学習を実社会での問題発見・解決に生かしていくための教科等横断的な学習を推進しています。
小学校、中学校、高校で必修化されたプログラミング学習も「STEAM教育」の取り組みの一つです。
参考:文部科学省WEBサイト
STEAM教育がなぜ必要なのか
今後、AIの進化とともに、人間が必要とされる職業は変化していくと予想されています。以下のようなスキルを持つ人がこれからの時代においても必要とされるのではないでしょうか。
技術者
AIを開発したり、使いこなすことのできる技術者はこれからますます需要が増えていくと考えられます。
コミュニケーション能力・問題解決能力の高い人
AIには難しい状況や環境に合わせた判断能力、問題解決能力を持つ人、他者を理解して動くことのできるコミュニケーション能力の高い人も必要とされます。
クリエイティブ能力の高い人
新しいものを1から考え生み出す力や、アート感覚の優れた人など、クリエイティブ能力が高い人も求められます。
「STEAM教育」では、問題解決能力や、創造力、協調性、コミュニケーション能力、論理的思考力、適応力、デジタルリテラシーなどといった能力を育むことができますが、これらはAI発展時代を生き抜くために必要なスキルです。
最後に
日本で「STEAM教育」が導入され始めたのは2020年頃からで(インドでは2015年導入)、他のIT先進国と比べると遅れをとっているような形です。まだまだ始まったばかりですが、現在「STEAM教育」を受けている学生たちが社会人になるのもあと数年後の話です。その時にはまた世の中も変わってきているかもしれませんが、AIが発展し続けている中、時代に合わせた情報収集やスキルの習得は常にしておきたいですね。
筆者Y.S